く
控室に残る熱と、肌に張り付いた汗の感覚が、なかなか消えない。
照明の下で晒された視線は、優しくも乱暴で、逃げ場がなかった。
カメラが回ると、私はもう私じゃない。
唇の湿り気も、わざと遅らせた呼吸も、全部「見せるため」。
求められるままに体を預けて、理性が薄くなる瞬間を演じる。
でも、その境目でふと、本当に境界が溶けることがあるから怖い。
「いいね、その顔」
耳元で落とされた一言に、背中がぞくりとした。
褒め言葉だと分かっているのに、胸の奥がざわつく。
支配されているようで、同時に、全部を握っている気にもなる。
撮影が終わったあと、脚が少し震えていた。
それをヒールで誤魔化しながら、鏡に映る自分を見る。
乱れた髪、赤みの残る肌、どこか挑発的な目。
「まだイケる」って顔をしていて、少し笑った。
帰宅してシャワーを浴びる。
熱い水が当たるたび、今日のシーンが断片的に蘇る。
忘れたいのに、体は正直で、思い出してしまうのが悔しい。
ベッドに横になり、天井を見つめる。
私は欲望を売る女。
でも、その欲望に飲み込まれすぎないよう、毎晩こうして一線を引く。
過激で、危うくて、誤解されやすい仕事。
それでも明日もまた、私はカメラの前で笑う。
少し乱れたままの心を抱えて。
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